Vol.278 『ブレードランナー2049』
TOHOシネマズ錦糸町にて『ブレードランナー2049』を鑑賞。1982年に公開された『ブレードランナー』の続編SF。
2049年、旧型レプリカントを排除するブレードランナーKは、あるレプリカントの骨を発見する。その骨は女性レプリカントのもので、帝王切開で出産した可能性があることが判明する。妊娠不可能とされるレプリカントが出産したことによる社会的な混乱を防ぐべく、子どもや証拠を末梢を命令されるK。捜査を進めるうち、その骨はレイチェルという旧型レプリカントであり、30年前、ブレードランナーであったデッカードと姿を消したレプリカントであることが判明する……。
そもそも公開当初、一般的には受けたとはいいがたかった『ブレードランナー』。この作品を評価していたのはごく一部のマニアであり、カルトムービーの部類に入る映画でした。それがディレクターズカットやファイナルカットといった別バージョンが作られたりして、いつのまにか一般的な評価を得る作品になっていたこと自体に違和感を覚えていました。
そして本作。前作の物語をきちんと受け継いだストーリーとしての正統な続編となっており、そのテーマとしての命にまつわる物語もきちんと織り込まれています。が、しかし、やはりカルトムービーですね。
一般に受けず、マニアが食いつく要因の一つに、裏読みや様々な解釈ができる描写、示唆されているけどきちんと描かれていない設定などがあります。前作も、映像から推し量れる要素で想像を膨らませ、理解できる自分すごい!的な盛り上がりをする人が公開時に多かったのですが、本作も似たような雰囲気があります。
個人的には、作り手側の解説や設定などを読まないと理解できない映画は、映画として成り立っていないと思うので、一般的な観点からするとダメな作品ということになるでしょう。そして、マニアックな観点からすると、その向こう側がいろいろな解釈ができて素晴らしいということになるのでしょうか。
一つ大きな問題として日本人には、その根底にある宗教観をきちんと理解できないであろうということがあります。日本で置くが深い作品というのは、様々な伏線が張り巡らされていて、それが活きてくる作品になるのですが、洋画の場合、だいたいその根底にキリスト教的な思想などが含まれる作品になります。その部分を日本人は理解しがたい。本作は神、そして天使、さらに堕天使といった要素が含まれていますが、その本質は完全には理解できないでしょう。そういう蘊蓄を語りたがる人は必ずいると思いますが。
前作と違い、はっきりとレプリカントであるとされているKが主役の本作では、命とはなんぞや、人とはなんぞや、それに必要なことは?といった疑問とその葛藤が描かれていますが、これは前作で、寿命が限られているレプリカントに対し、人として正面から向き合うデッカードの葛藤と対比になっており、その差を観客に求めるセリフがラストシーンで提示されます。このあたりの作り方がまさにマニア向けだなと感じます。
映像に関しては、さすがにその進化は素晴らしいのですが、どこかカオスな雰囲気の漂った前作に比べてすっきりしすぎてるなという雰囲気。あのごちゃごちゃとした、スクリーンから匂いがしてきそうな臨場感はありません。
全体的には、映画を観てあれこれ深掘りしたり、蘊蓄を語りたいという人にはいいのではないかと思いますが、一般的にはどうでしょうか。とにかく冗長ですし、テンポもいいとは言えず、観る人を選ぶ作品だなと思います。
個人的には二つなんて言いません。「一つで十分ですよ」という感想を持った作品でした。
『ブレードランナー2049』は、全国ロードショー中です。
配給・宣伝:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
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