Vol.250 『貞子vs伽椰子』
マスコミ試写にて『貞子vs伽椰子』を鑑賞。ハリウッドでリメイクされたJホラー『リング』の貞子と『呪怨』の伽椰子がまさかの共演を果たしたホラー映画。
大学生の倉橋有里は友人・夏美とともに、リサイクルショップで古いビデオデッキを購入する。そのデッキには“呪いのビデオ”が入っていた。そして夏美はそのビデオを観てしまい、貞子の呪いにかかってしまう。除霊を試みるが強力な貞子の呪いを排除できず、より力を持った、霊能界の異端児である経蔵に頼ることとなる。
一方、女子高生の高木鈴花は、両親の都合で引っ越した先の隣の家に呼び寄せられる。この家こそ伽椰子によって、足を踏み入れたら出ることができない“呪いの家”であった。その家に入ってしまった鈴花は危ないところを経蔵に救われる。経蔵は呪われた女性たちを救うため、貞子と伽椰子の呪いをぶつけて消滅させるという作戦を考えつく。
場内が暗くなり、上映が始まった瞬間、驚きました。KADOKAWA配給の貞子の映画をKADOKAWAの試写室に観に来ている……のに、バーーンと映し出されたUNIVERSALのロゴ。この映画は両社がタッグを組んでいるので当たり前といえば当たり前なのですが……というようなマニアックな反応はどうでもいいですね。
21世紀に入り、呪いのビデオも呪いの家も都市伝説と思われている世界で、貞子と伽椰子が復活する。問題なのはビデオです。もうビデオを使っている家庭はほとんどない現在、呪いのビデオをどのように登場させるのか。そしてその呪いがどのように伝搬していくのか。
貞子の呪いの恐ろしさは、その伝染力にあります。そして、限られた期限の中で、呪われてしまった人たちがどのようにその呪いに立ち向かい、伝染を防ぐために戦うのか。そしてその間、じわじわと迫ってくる貞子の呪い。タイムリミットと、訪れるであろう凄惨な最期へ絶望感との葛藤。これが貞子の物語の醍醐味です。
ところが、貞子というキャラクターが一人歩きしすぎて、最近の作品はこういったゾクゾク感がとても薄く、単なる恐怖を現すクリーチャーでしかなくなっていました。そういったアプローチももちろんありだとは思うのですが、単なる異形の者が人を襲って怖がらせる映画はハリウッドにまかせておけばいいし、日本のホラーの良さを薄くしてしまうと思います。
Jホラーという言葉が生まれる前から、日本では『四谷怪談』や『番町皿屋敷』に代表されるような怨念と呪いの世界が主流だった。そしてそれを改めてつきつけてきたのが貞子の物語でした。本作は、その持っていた良さに立ち戻った感があります。
貞子と伽椰子が対決するという話を聞いたとき、またクリーチャーがばんばん戦うようなそんな映画になってしまうのではないかという懸念がありましたが、呪われた人がその運命に抗う、そしてその間、じわじわ迫る、呪いによる死の恐怖……。これこそ貞子の世界であり、観客に求められている物語だと思います。
昔の呪いのビデオは観てから1週間後でしたが、今回は2日間になっているなど、細かい変更はありますが、呪いのビデオを観る、電話がかかってくるといった過程はそのまま。呪われたのだと自覚し、死におびえる登場人物というのは昔の『リング』などの雰囲気そのものでした。
ただ、この呪いのビデオの映像が昔のものとは違うのです。しかもなかなかその全貌が観られなくて、そこに少しフラストレーションが溜まります。いったいどんな映像なのかが気になって仕方ない。さらに言うと、不気味さが足りない。気味の悪い映像が次々と出てくる、昔の呪いのビデオはそれだけで不気味でしたが、今回の呪いのビデオはかなりストレートなのでそこに込められている怨念が感じられない。もちろんそういう映像にした意味はあるのですが、少し残念でした。
このような怨念の話に加えて、本作ではさらに貞子と伽椰子の対決というクライマックスが待ち受けています。Jホラーの怖さと日本が誇る2大怨霊の戦いが観られる映画はそうそうありません。自分に向かって右から伽椰子、左から貞子が迫ってくる恐怖……想像してゾクッとした方、ぜひ観ることをオススメします。
また、最近のJホラーつまらないと思っている方にも向いている作品です。こうした企画は、得てしてお祭りになってしまうきらいがありますが、ホラー映画としてもしっかりと作られており、楽しめると思います。
『貞子vs伽椰子』は、6月18日より全国ロードショーで、4DX/MX4D上映も決定しています。
©2016「貞子vs伽椰子」製作委員会
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