Extra 『機動戦士ガンダム THE ORIGIN III 暁の蜂起』
関係者・マスコミ試写にて『機動戦士ガンダム THE ORIGIN III 暁の蜂起』を鑑賞。安彦良和さん原作の同名コミックのアニメ化第3弾。
身分を偽り、シャア・アズナブルとしてジオンの士官学校に入学するキャスバルは、同期となったザビ家の四男ガルマと親交を深め、信頼を勝ち取っていく。その頃、連邦への不満に抗議するデモがエスカレートしつつあったスペースコロニーでは、ついに連邦軍が武力による鎮圧を始める。シャアは、その様子を放映していたテレビをみているガルマに対して言葉巧みに武装蜂起を促し、学生たちはガルマの元で立ち上がるのだった。
後に「暁の蜂起」と呼ばれる、連邦治安部隊に対する学生たちの武装蜂起を主軸として描かれる本作。これが引き金となって一年戦争につながっていく、宇宙世紀の歴史の転換点がいよいよ映像化です。
全体的に非常にテンポよく進む本作は、「暁の蜂起」でのアクションシーンも相まって、1時間という短い尺ではありますが、とても凝縮された内容となっています。冒頭にI・IIの要約が入りますが、それがなくても、本作だけで十分楽しめます。
本作では、いよいよキャスバルがシャアとして、ザビ家への復讐の第一歩を踏み出すわけですが、いかにしてシャアという人物が形作られていったのか、ジオンの中でその立場をどのように築いていくのかの序章になります。
この『THE ORIGIN』のような、ある物語の前日譚というのは、一つ、大きな難しさを持っています。それは、その先にある物語、結末を観客が知っているということです。この先、こうなるんだよね、この人はこうなっちゃうんだよね、という知識を持った人達が観る。それでいて、そこへただつなげるだけでなく、その作品だけでも楽しめるように作らないといけない。これはかなり難しい構築作業になります。
シャアによるザビ家への復讐の最初の犠牲者となったガルマ。しかしその瞬間まで、シャアのことを疑うことなく、友人として全幅の信頼を持っていた。その信頼はどこからきたのか、あるいは、二人の関係はどのようにつむがれてきたものなのか。それを描くというだけでなく、逆に、本作を観ることで、旧作の説得力が増すようにならなければなりません。
こうした前日譚が作られると、時系列に沿って観る人も出てきますが、後になって作られる前日譚というのはあくまで旧作に対するアンサーであって、時系列で観るとその正しい姿がゆがんでしまう場合があります。一部分だけ語られたこと、あるいは設定として存在する、これまで想像で補ってきたことが具現化される。それはあくまで旧作ありきでなければならず、本作はその部分が非常にうまく描かれています。
この話があって、「大気圏突入」から「ガルマ散る」までのシャアとガルマのやり取りに厚みが増す。いい形で補完できてるなと感じました。
そういえばこの「暁の蜂起」事件では、もう一つ歴史の鍵となる出会いがあります。士官学校の校長を務めていたドズルの動きを封じる役割を担ったゼナ・ミアの出会い。この2人は後に結婚し、そして2人の間にミネバが生まれるわけですが、一年戦争のきっかけとなった事件が、結果的にその後、数十年に渡って歴史に影響を与えるキーパーソンを生み出すことになるというのがなんともおもしろいところです。
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN III 暁の蜂起』は、5月21日よりイベント上映です。
©創通・サンライズ
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