Vol.234 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
TOHOシネマズ日本橋にて『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を鑑賞。メル・ギブソンを一躍スターダムに押し上げた『マッドマックス』シリーズの30年振りの新作。
戦争によって資源が枯渇した世界。水を独占し、一大勢力を誇るイモータン・ジョーに囚われたマックスは、ジョーの部下であるフュリオサの反逆に乗じて、ジョーが子作りのために軟禁していた女性たちとともに逃亡する。東にあるという緑の大地へ向けて爆走する、走る要塞ウォー・タンク。それを追うジョーの軍団の凶悪な車両たち。乾いた大地に巻き上がる砂塵の中、自由への逃避行が始まる。
本作では、キャラクターそれぞれにバックグランドとなるストーリーがあるはずなのですが、あまり深く語られることなく、とにかく車の迫力で押される感じ。もちろん逃走中に徐々にキャラクターが見えてくることは見えてくるのですが、掘り下げが足りない感じがしました。
戦争から40年以上が経ち、汚染された大地に生まれた者たちは戦争前を知らず、さらに体も蝕まれていて奇形だったり、余命が短いという世界。このあたりがかなり説明不足な感が否めません。ジョーの部下であるウォーボーイズたちが輸血が必要であり、そのために輸血袋とされるマックスとか、フュリオサがなぜジョーのもとにいたのかとか……要らないと割り切ってカーアクションを楽しむことは可能ですが、もう少し踏み込めば、話自体の深みが増したのではないかという気がしました。
さらにいうと、主人公であるマックスが能動的に動いてないんですよね。なんか成り行きに流されただけというか。そのせいかジョーへの感情が盛り上がらない。こいつやっつけないと!というような感情移入がしにくい。嫌なやつだし、憎たらしいんですが、マックスからしたら倒さないといけない対象になっていないというのが致命的。
ある意味、本作での主役はフュリオサなのだなとは思います。砂漠での慟哭シーンなどは観ている者の心を打ちます。いっそのことマックスの出番なしでフュリオサ主役の映画にしたほうが完成度は高くなると思いました。
簡単に言ってしまうと『マッドマックス』にする必要がないとも言えます。インターセプターも活躍しませんし、マックス抜きで外伝という映画にしてしまったほうがすっきりすると思います。
アフリカのナミビアで撮影したという砂漠・荒れ地でのカーアクション、カーバトルは迫力の一言。息をもつかせぬスタントの連続は、CGでは決して出せない生の迫力があります。とはいっても、まったくCGを使っていないかというとそんなことはなく、ジョーの砦や砂嵐などはやはりCGです。そのあたりはまったく気になりませんでしたけど。
本作のおもしろさはなんといってもカーバトルになるわけですが、ドルビーATMOSや3D、あるいは4DMXで観たらおもしろい作品だと思いますね。今回、通常版を観て、それだけの迫力があったわけですから、音や映像が伴ったらさらにすごいのだろうと思います。まあ、3Dを意識した目の前に何かが飛んでくるという映像はやめようよと思いましたけどね。3Dで観ててもわざとらしいのに、それを2Dで観ると、それだけで作られた映像という感じになって醒めちゃいます。
登場する車は相変わらずぶっとんでるというか、観てて楽しいですね。車の上で延々ギターを演奏して闘争本能をたきつけるギタリストとか、よく考えたなぁと。本作でもっとも印象に残るキャラクターだったんじゃないでしょうか。
作品としては、カーアクション好きは必見、物語を求める人には勧めないというところですね。個人的には、戦後40年経ってもヒャッハーな連中がはびこってる世界というのが受け入れられないので、どんなリアルなアクションであってもどこか醒めた目で観てしまう作品でした。やはり自分の中では、マックスは『マッドマックス』1本で完結しているんですよね。
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は全国公開中です。
©2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED
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