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Vol.181 『ねらわれた学園』

マスコミ試写にて『ねらわれた学園』を観賞。眉村卓さん原作のジュブナイルとして何度か映像化されましたが、今回は初のアニメ作品となります。

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古都・鎌倉を舞台に展開されるこの物語は、主人公・関の前に現れた不思議な転校生・京極、関が憧れる春河、幼なじみの涼浦の4人の中学生による青春ストーリーとして描かれています。もちろん『ねらわれた学園』ですから、超能力などもからんできますが、登場人物たちの淡い恋、そして友情物語のほうがメインです。


誰もが一度は経験する思春期の微妙な心の揺れ、そしてもどかしいほどの想い。どこか甘酸っぱい香りのするそうした時期を過ごした方には多くの共感を得られるのではないでしょうか。そして、その舞台を表現するためのクォリティの高い美術。フレアを取り込んだかのような光の表現が全編にわたって描かれ、キラキラと輝いていた幼い頃を無意識のうちの感じさせてくれます。

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最近、こうした1970~1980年代の物語を現代の技術・視点で再構築する作品というのがかなり増えていますが、この作品は焼き直しではなく、『ねらわれた学園』という名のまったくの新作です。無理矢理新しい要素を加えるということもなく、原作当時になかったものとして登場するのは携帯電話くらい。それだけ人間ドラマのほうをしっかりと描いているとも言えます。
まったくの新作と書きましたが、原作や旧映像化作品を観ている人にはそれ相応の楽しみもきちんと用意されています。原作や旧映像化作品を観ていない人にももちろん楽しめる内容になっていますが、それらを観ている人であれば、途中で、あぁそういうことかぁ、なるほどと感じる部分があると思います。
『ねらわれた学園』をサンライズがアニメ化するということで、超能力対決などがばーんと描かれる、アクション要素の強い作品なのではないかと思いながら観たのですが、ことごとく予想を裏切る展開。これがむしろ気持ちいい裏切られ方といえばいいでしょうか。「それよか、明日週末じゃん。海行かね?」……もう、このセリフが忘れられません。ここでそういう展開になるかぁ!と。
あと特筆すべきは、声優にAKB48の渡辺麻友さんが起用されている点でしょうか。プロの声優ではないという点がどうだろうという思いはあったのですが、まったく違和感なかったですね。むしろはまっているといっていいんじゃないでしょうか。ゲスト声優のおかげで台無しになる作品もありますが、この作品はそういうことはありませんでした。

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『サマーウォーズ』以降、このような雰囲気の作品が多くなった気がしますが、その中でこの作品はトップクラスの出来映えだと私は感じました。
観終わった後、この物語の後に主人公たちが過ごす時間は対していろいろな想像をめぐらせてしまうような余韻もあり、ほのぼのとしたやさしい気持ちで席を立てる、そういう作品です。
『ねらわれた学園』は、11月10日より全国ロードショーです。

©眉村卓・講談社/ねらわれた学園製作委員会
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