Vol.119 『カサノバ』
観賞映画振り返りコラムの48回目は1980年に観た『カサノバ』。友人が招待券があるということで観に行った映画で、有楽町のスバル座で観ました。
稀代の色事師として知られるカサノバの人生を、映像の魔術師と呼ばれたフェデリコ・フェリーニが映画化した作品。セットでの撮影にこだわった映像がフェリーニ独特の色彩で描き出され、他の監督にはない映像美を作り出しています。布(?)で作った海を小舟で渡るシーンなど、ともすれば陳腐な画になりがちなシチュエーションもきちんと説得力のある映像となっているのはフェリーニの手腕でしょう。
様々な女性と関係を持っていくカサノバ。1000人もの女性と関係をもったとも言われるカサノバの波瀾万丈な人生。描き方によってはとても下品な内容になりそうですが、そこをシュールな世界観でまとめあげ、カサノバが抱えている涸渇感をもって、悲哀に満ちた人生を描き出しています。
年老いて人生を振り返るカサノバのもの悲しさが伝わるラストシーンはフェリーニ作品の中でも指折りの名シーンではないでしょうか。カサノバを演じているドナルド・サザーランドの演技力に加え、ニーノ・ロータの音楽もすばらしく、華やかな人生を歩んできたはずのカサノバという人物の孤独を見事に演出しています。
ただ、フェリーニの映画は人を選ぶというか、万人向けではないような気がします。この作品も観る人によってはつまらないと思う人もいると思いますし、その独特の雰囲気になじめない人も多いのではないでしょうか。
個人的には悪い映画とは思わないのですが、すべてを込めたそのラストシーンを導くためにこれだけの尺が必要かどうかというと少々疑問符がつきます。悪い言い方をすると冗長でダラダラと続く感じ。不要なシーンがあるとは言いませんが、もう少しテンポよくまとめられていればいいのになぁとは感じました。
さて、このコラムで1980年の振り返りコラムは最後になります。やっと30年前まで終了。まだまだ先が長そうです……いったい何本あるんだろう?(^_^;)
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コラム, 歴史物・偉人物映画
2010/09/12 05:56 MOVIEW