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Vol.110 『東京島』

東京島マスコミ試写にて『東京島』を観賞。桐野夏生さん原作のベストセラーを映画化した人間ドラマ。
嵐で無人島に漂着した中年夫婦、バイト先から逃げ出してきた若者、密航が見つかり船から降ろされた中国人。男性23人、女性1人。この島で唯一の女性である清子の夫が謎の死を遂げる。清子は若者の中からカスカベを2人目の夫とするが、これもまた不審な死を迎える。そして、残った者たちは争いを避けるため、清子の3人目の夫をくじ引きで決めようとするのだった……。


島からの脱出よりも、この島で平和に過ごすことを優先する日本人の若者たち。サバイバル生活も場当たり的で計画性がなく、全体的に事なかれ主義で過ごす彼ら。それに対して中国人グループは、何もない中から油や塩といった調味料を作り、廃棄物のドラム缶を使って脱出用の船を造る。
この2グループの対比は現代の若者を象徴しているのでしょうか? もしそうであれば、窪塚洋介さんが演じるワタナベという日本人グループに加わっていない変わり者は何を表しているのでしょう。東京島と名付けられたこの島は現代社会の縮図というコピーで展開していますが、個人的にはどうもピンとこないというのが本音です。
女性に比べて男性は戦いを好む人種であることはこれまでの歴史でも明らかです。しかし、現代社会をみていると、ライバルがいたり、敵がいたりしても、表面上は取り繕い、和を崩すようなことをしないのが男性かなという気がします。たとえば社内で争いごとを作らないよう、気に入らない人間相手でもなんとか穏便にすまそうとするとか、そういうところありますよね。
しかしそれはあくまで生活といったものが保証されている状況においてであって、この映画に描かれているような状況になったとき、私はこのような展開にはならないと思います。少なくとも15人というような単位でまとまるとは思えない。せっかくのおもしろいシチュエーションなのに、そこに真実味がないことで全体が妄想っぽいイメージになってしまっているように思えて、少し残念です。
それに対して唯一の女性である清子の描き方はまさに女性そのものという気がします。生きるため、この島を脱出するため、その時々に応じて2つのグループを行き来する清子。時として女を武器に使いながらも生き抜いていく。そのたくましさ、生に対する欲望など、女はいざとなるとほんとに強い!というイメージでしょうか。
この清子というキャラクターに共感できるかどうかが、この映画をどう評価するかにつながる気がします。映画を観ていてとてもおもしろいキャラクターですし、その変化や心情もよく伝わってきます。また木村多江さんが、唯一の女性でありながら、若者たちより年上であることへの戸惑いと自尊心の揺れといった部分を見事に演じているのは高く評価されていいでしょう。その分、対比される男性のほうの描き方が残念。
すべての男性が同じように感じるとは思いませんが、女性向け映画と考えたほうがいいかも知れません。エルメスが特別協賛していたりして、女性なら、そういった部分の楽しみもあると思います。
東京島の舞台となった島は沖永良部島と徳之島でロケをしたとのことですが、まさに無人島という雰囲気がよく出ていると思います。外洋の中にぽつんとあるために船が通ることもないという感じが、波の荒さなどでよく伝わってきます。
『東京島』は8月、シネスイッチ銀座ほか全国ロードショーです。
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