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Vol.92 『シャッター アイランド』

シャッター アイランド オリジナル・サウンドトラック完成披露試写にて『シャッター アイランド』をTOHOシネマズ日劇3で観賞。マーティン・スコセッシ監督、レオナルド・ディカプリオ主演。
「全ての“謎”が解けるまで、この島を出る事はできない。」というキャッチコピーが壮大な謎解きを予感させるミステリー映画……のつもりで観たのですが、ミステリーというよりは心理サスペンスといったほうがしっくりくる感じです。


ミステリーという言葉は推理小説だけを指すものではないので、謎を解き明かすという観点からすればミステリーとも言えなくはありませんが、もしそうであればヴァン・ダインの二十則を持ち出すまでもなくアンフェアなミステリーだと思います。
かつて『名探偵登場』という映画で「最後の数ページで突然登場する人物が犯人というのはどうなんだ?」という主旨のセリフで、読者あるいは視聴者に情報を与えていないことを持ち出して事件を解決するということを否定していたことがあります。この作品もまさにそういった感じ。
すべての映像に様々なヒントが隠されているという触れ込みですが、それらはなんら真実を告げておらず、観客に謎解きをさせるために用意されたとは言えません。最後まで観たときに「あぁやっぱりあれはそういうことだったのか」とは思えますが、それを持って謎解きができるわけではありません。もう一度観たら、ラストを知っている分、まったく違う見方にはなると思うのですが、それでも謎解きのための伏線とはちょっと言えないなぁという感じでしょうか。
ですので、この作品をミステリーとして扱ってしまうとミステリーの定義という観点からは否定づくめになってしまうので、あくまで心理サスペンスとして書きたいと思います。記事カテゴリがサスペンスになっているのもそういう理由です。
この作品の鍵となるのは、ディカプリオが演じる連邦保安官テディが見る夢。自分が解放に立ち会ったユダヤ人収容施設の光景、そこに登場する人物たち、「なぜ助けてくれなかったの?」と問う少女……。この夢が徐々にその内容を変えていく過程こそ、テディの心理面が追い込まれていく様子を表していて、観る者にもじわじわと恐怖感を与えていきます。
精神を患った凶悪犯のみを収容する島。ハリケーンの直撃によってその島から出られないテディとその相棒のチャック。そこにいる誰もが不審な言動をし、すべてが怪しく感じられる……そこにテディの夢を差し込むことによってさらに効果を増し、スクリーンの中にはりつめた空気が漂うのを感じてしまう。
こういった点は脚本はもちろんですが、スコセッシ監督の演出力の手腕がなせる技だと思います。最初から最後まで緊迫した雰囲気を保つというのは、映像として作るにはかなり難しいことですが、この作品ではそれを実現しています。すべてが怪しいということは、観ている側からはひとときも目を離せないということですからね。
何が正しくて、何が嘘なのか。閉ざされた島から忽然と姿を消した女性を追う連邦捜査官がたどりつく真実とは?……謎解きというよりもそういった視点で観るほうが、より楽しめる作品だと思います。
『シャッター アイランド』は4月9日からTOHOシネマズ スカラ座ほかにて全国ロードショーされます。
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おすすめ平均
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starsアンフェアだと思ってる方、一人称小説だと勘違いしてないか?
stars椅子から転げ落ちるほど驚いた。

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