Vol.54 『火天の城』
丸ノ内TOEI 1にて『火天の城』観賞。織田信長の居城・安土城を造った大工の物語。これまでの時代劇とは違い、合戦シーンがなく、あくまでも城造りがメイン。
織田信長の話は多くの小説を読みましたし、映像としても機会があれば観てきました。しかしその多くは人物としての信長を描いているわけで、今作のように城造りにスポットを当てたことはなく、考えてみたら時代劇の舞台となる城などはいつのまにか完成しているわけで、誰が設計したかというようなことが描かれるのはほとんどないですよね。墨俣の一夜城や大阪城については多少ありますが。
また安土城そのものも山崎の合戦直後に焼失していて現存せず、復元もされていないため、はたしてどのような城であったのかということに非常に興味がありました。屏風絵などに残されている安土城の絵をみる限り、他の城とは一線を画す威厳があり、これがどのような映像となるのか、城好きとしては観なくては!と。
で、登場した安土城……何かイメージが違うんですよね。映像からその大きさも感じられない。テレビの時代劇に出てくるような、いかにもCGのお城でしかなく、現実味がありません。完成後のカットも短いし、内部がでてきたのは一部屋だけ。荘厳な安土城の映像を期待していっただけに少しがっかりという感じ。
内容自体は城造りにかける人達の物語ということではあるのですが、どうもその苦労が伝わってきませんでした。極端な話、その柱さえあればできるわけ?という感じで、ピンポイントにテーマをしぼりすぎたのではないかと思います。あれだけの城を造ると考えたら、もっと日常的に様々な問題があったと推測しますし、それを乗り越えてこんなすごい城ができたんだよ!という最終的な映像提示も少なく、ちょっと共感しづらい感じでしたねぇ。
また、要らないシーンもけっこうありますし、背景のない唐突なエピソードもあり、これらをきちんと整理すればいいのになぁと。定番の死亡フラグが立ったらそのまんまフラグ通りのストーリーになってしまうし……。
信長役の椎名桔平さんや秀吉役の河本準一さんに関しては賛否両論ではないかという気がします。これまでの信長・秀吉というイメージとはかなり離れたキャスティング。特に悪いということはありませんし、新しい信長・秀吉像ではありますが、いままでのイメージを持った方は違和感を感じるかも知れません。
なにか全体的に、こういう映像をみせてもらえるんだろうという期待が大きすぎたためにちょっと残念というのが素直な感想です。
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コラム, 時代劇映画
2009/10/03 17:16 MOVIEW