Vol.219 『LUCY/ルーシー』
TOHOシネマズ錦糸町にて『LUCY/ルーシー』を観賞。リュック・ベッソン監督最新作。これは……SFに分類するべきですかね。
全体の10%しか使われていない人間の頭脳。これがもし100%使われたらどうなるのか? 10分の1しか使っていなくても、これだけの文明を築いている人類。それが100%活用できたとしたら一人一人のデータ処理能力はとてつもない情報量になり、どんな世界になるのか見当がつきません。その世界をどう描くのか? その興味だけで観に行きました。
ある薬の影響で、頭脳の使用量が増えていくルーシー。20%、30%……できることがどんどん増えていきます。あっという間に知らない言語を習得したり、機械や銃が知識もなくできたり、反射神経も向上し、反対車線を疾走してもなんらぶつかることなく運転できたり……。
こうした人間離れした能力を獲得していくのは納得いきますし、さもありなんという感じもあるのですが、そこから徐々にずれていて、超能力もどきの力になっていく様は少々いただけないというか、「はあ?」という感じ。せっかくおもしろい設定なのに興ざめしてしまうという感じでしょうか。
脳が活性化したからといって、DNAを書き換えることができるようになるとは思えませんし、見えない電波が見えるようになったり、手を触れずに他人に影響を与えるようなことができるようになるかといったらちょっとあり得ないかなぁと。
思っていても体が反応しない、手足や指先が追いつかないということは往々にしてありますよね。アクションゲームなどをやっていて、わかっているのに指が動かずにやられてしまうなどということは当たり前のようにあるわけです。そう考えると、脳の能力が上がったからといって身体能力まで向上するとはなかなか考えにくいんじゃないでしょうか。
そういったことを考える間もなく一気に見せてしまおうというとしているのはよくわかります。畳みかけるようにシナリオが展開し、あれよあれよという間に終わってしまう。何せ90分しか尺がないですからね。あっという間というか、短い!というのが素直な感想でしょうか。
尺が短い分、人物の掘り下げも荒いですし、話の背景となっている理論などがまったくの説明不足。さらに言うと、主人公の変貌が極端すぎるというか……。ごく普通の女子大生に未知の能力が発現していくんです。もっとおたおたしたり、その変化に戸惑ったり、その能力に悩んだりといった描写が欲しかった。こんなことが!的な戸惑いや驚きといったことを膨らませられたら、もっとおもしろい話になったんじゃないかなぁ。
『ザ・フライ』で、ハエのDNAによって変化していく体について、こんなことができるようになったとか、ハエの食事の仕方はこうだとか、その過程を楽しみながら変化について提示していくシーンがありますが、女子大生がスーパーウーマンになっていく過程をそんな感じで描いていたら、その変化に萌える部分もあったんじゃないですかね。
先ほどもちょっと書いた、反対車線を疾走するチェイスシーンとか、アクション的な見せ場はおもしろかったですし、ワクワク感もありますが、人物描写や話の説得力という点でちょっと残念。せっかくおもしろいテーマを取り扱っているのにもったいないなぁという気がしました。
『LUCY/ルーシー』は、全国ロードショー中です。
©2014 Universal Pictures
SF映画, コラム
2014/10/19 06:34 MOVIEW