『殺し愛』森田成一さんオフィシャルインタビュー#10が公開
好評放送中のTVアニメ『殺し愛』。
3月16日に放送された第10話の魅力を、森田成一さんが語るオフィシャルインタビューが公開されました。
●表立った「狂気」と内なる「冷静さ」の度合いに気をつけている
――原作の第一印象はいかがでしたか?
森田成一さん:最初はダークなお話……例えば、『ボーン・アイデンティティー』のようなサスペンス・アクション、「殺し合い」の作品かと思いました。ところが「殺し愛」。ラブなんだなと(笑)。リャンハとシャトーの関係性が人間らしくて、ただ殺伐とした暗殺者のお話ではないところがおもしろかったです。
――ニッカはどのような人物だと捉えましたか?
森田さん:少しキレている人って重要な存在にはなってくるんですが、たいてい最初から死亡フラグが立っていますよね?
――ありますね(笑)。
森田さん:それをニッカにも感じて、最初は「参ったなぁ」と(笑)。ただ、そういう役どころって物語の大筋とは違ったサイドストーリーで必ず物語を膨らませる役割を果たすので、ニッカの立ち位置はすごく気に入っています。しかも、見た目と内面に大きなギャップがあるところがおもしろいんです。
――というと?
森田さん:ピアスをたくさん開けてどこかヘラヘラしているという、捉えどころがない見た目をしているんですが、モノローグに注目すると物事を冷静に分析しているんです。普通は逆ですよね? 冷静な部分を表に出して、内なる狂気はなるべく隠すのが人間だと思います。ところが、ニッカという人間はこれを逆転させているんです。この不気味さこそがニッカの魅力だと思うので、表立った狂気と内なる冷静さの度合いに気をつけながら演じるようにしています。
――確かに、他のキャラクターたちとは逆ですよね。
森田さん:そうなんです。みんな平静を装いながら殺し合いをするという狂気じみたことをしている。それを逆転させたニッカは、作中で描かれる狂気というものをあぶり出す役割を担っているんじゃないかなと思いました。
――ニッカの役作りで他に何か意識されていることはありますか?
森田さん:『殺し愛』はオフゼリフが多いんです。キャラクターが画面に映っていないところでしゃべるセリフのことですね。それが声の演技としては遊べる部分なので、そこでセリフを踊らせてみたり、息を入れてみたりしてニッカらしさを盛り込むようにしています。
――アドリブということですか?
森田さん:目立つようなアドリブではなく、例えばセリフの前で「ふっ」と息を吸ってみたり、笑っているニュアンスを込めたりするイメージです。アニメのセリフ回しではないセリフ回しを少し入れてみたかったんです。どこか外画っぽさがある作品なので、そういうニュアンスを少しだけ入れるようにしています。
――また、第8話では車中でリャンハとやりとりをする場面がありました。あちらを演じられての感想はいかがでしたか?
森田さん:密室劇ってすごく好きなんですよ。昔の映画だと『十二人の怒れる男』(法廷を舞台にしたアメリカ映画)なんかも大好きですし。第8話は車というさらに狭く、移動して逃げられない空間で心理的な駆け引きが行われる。一番面白いシーンでした。ニッカの性格がはっきりとわかる場面でもあるので、ジェットコースターのような演じ方をしています。
――確かに、テンションの落差が激しかったです。
森田さん:陽の部分と陰の部分をジェットコースターのように分けつつ、波の大きさが小幅になっていって、最後に重なっていくようなイメージですね。そういう設計で演じたいなと考えていました。
――ニッカの観察眼もいかんなく発揮されていました。
森田さん:分析のために、リャンハをけしかけるのがおもしろかったです。本当に冷静に分析しているんだなと。一番おもしろかったのは、ケガをしたリャンハにハンドタオルを渡すところですけどね。
――急に差し出していましたよね(笑)。
森田さん:ハンドタオル、持ってるんだって驚きましたよ(笑)。ちゃんとしてるなって。自分の車を汚されたくないと言っていたので、かなりの潔癖症なのかも。きっと車の中に常備していて、自分のポケットにはアイロンをかけたハンカチを入れているんだろうな……なんて想像してしまいました。
――第9話もまた、リャンハと対峙する場面がありましたね。
森田さん:第9話だけを見るとニッカが単純にリャンハとバトルをしたがっているように見えますよね。ただ、それだけだとニッカがただ暴力行為、人殺しが好きな人間になってしまいますし、ニッカのモノローグを聞く限り、そういうタイプではない気がしたんです。
もちろん、自分がどれだけ強いかは気にしていると思います。リャンハという人間が現れて、やっと腕試しができる。そういう感覚がないわけではないんです。リャンハに攻撃をされるときに、「獲物がかかった」とばかりにニヤッと笑う瞬間がありましたし、ニッカが殴るときのアクションにしても、バトルを楽しんでいるような余裕を感じさせられましたから。
――でも、それだけではないと。
森田さん:そうです。リャンハを見逃すというところにすごく引っかかったんです。当然、そんなことをすればドニーや他の組織の人間から爪弾きにあうのは明白ですし、クレバーなニッカなので、それでもやるということは何かしらの理由があるんだろうなと。
――第10話では、自ら逃しながら飄々と「ソン・リャンハは俺が仕留める」と言っていましたね。
森田さん:まさにそこですね。なぜ、その時間を作ったのか。そこがニッカをより深く理解するためのカギになるんだと思います。
――ドニー一家についてはどんな印象をお持ちになりましたか?
森田さん:きれいなお家で屋敷の中も整っていて、ドニー自身も理路整然としているのに、やっていることはめちゃくちゃ。ここがニッカと対比構造になっているのもおもしろいところだなと思います。ドニー一家だけでひとつ作品が作れそうです。
――残すところあと数話ですが、今後の注目ポイントを教えてください。
森田さん:この作品には、リャンハ、シャトーのメロディー、リズムがあれば、ドニー一家のメロディー、リズムがあり、その流れが噛み合って大きなうねりとなっているので、ぜひその流れに身を任せていただけたらなと思います。流れとしてはシンプルなんです。余計なところを描かずに、大事なところをじっくり描いてくださっているので、そこを楽しんでいただけたら嬉しいです。
――ありがとうございます。毎回恒例なのですが、タイトルの『殺し愛』にかけて、皆さんに「最近、愛してやまないもの」を伺っています。森田さんはいかがですか?
森田さん:バイクとカメラです。今日はスタジオまでスーパーカブで来ました。もう1台、23年乗っている1600ccのバイクがあります。カメラはフィルムカメラが200台以上、レンズはそれ以上ありますね。
――200台以上ですか!
森田さん:はい、ヴィンテージものでだいたい60年前、70年前のものから、一番古いものは88年前のものまであります。
――実は、リレーQ&Aでも前回ゲストの日笠陽子さんからカメラに関する質問が届いておりました。「写真がお好きだそうですが、写真のどんなところが好きですか?」とのことです。
森田さん:クラシックカメラの話になりますが、まず機械の精密さがすごいですよね。電池を使わずにバネと歯車で1000分の1秒だって正確にたたき出せる、その技術のすごさ。昔の人の知恵と技術力が感じられます。しかもそれが88年経っても新品のように使える。これはもうロマンとしか言いようがないです。
もう一つは物語があるところ。何十年前に作られたこのカメラ達は、一人の方が使い続けてきたのか、あるいは何人かの手に渡ってきたのかはわかりませんが、僕が生まれるずっと前に作られ、誰かが手にして、その時代、その場所の光、空気を撮ってきたわけです。それが僕のもとへやってきて、令和の時代の光や空気を撮っている。まるでタイムマシンみたいだと思いません? 一台一台のカメラに物語があるところが一番好きなところです。
――一台一台に刻まれた歴史があるわけですね。
森田さん:実際、何千台と見てきているので、傷一つでどういう風に使われてきたのかがわかるんです。ここに傷がついているから報道の人だなとか、これは天体を撮っている人だなとか。使い方によって独特の傷がつくので、そういうのを見るのも楽しいですね。
公式サイト:https://love-of-kill.com/
公式Twitter:@LoveofKill_info
©2022 Fe/KADOKAWA/殺し愛製作委員会
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