日本の特撮の歴史を支えた「生誕100年 特撮美術監督 井上泰幸展」開催決定
未公開の貴重な資料や、三池敏夫さんによる「空の大怪獣ラドン」西鉄福岡駅周辺ミニチュアセット再現など、特撮美術監督・井上泰幸さんの功績を俯瞰する「生誕100年 特撮美術監督 井上泰幸展」が3月19日より東京都現代美術館にて開催されます。
井上泰幸 アルファ企画にて、1994年 撮影:斎藤純二
特撮のパイオニアである円谷英二さん(1901~1970)のもと、『ゴジラ』(1954)から特撮美術スタッフの一員としてそのキャリアをスタートし、日本の特撮において大きな足跡を残した特撮美術監督・井上泰幸さん(1922~2012)。
「生誕100年 特撮美術監督 井上泰幸展」は、井上さんが遺したスケッチ、デザイン画、絵コンテをはじめ、記録写真や資料、撮影で使用したミニチュアやプロップ、当時を再現したミニチュアセットなどの展示を通して、その功績と日本の特撮映像史を俯瞰し、次世代に向けて創造的なインスピレーションを喚起することを目指す展示会です。
万能潜水艦α号 デザイン画、『緯度0大作戦』(1969)より © TOHO CO., LTD.
●見どころ1 井上泰幸さんの功績を俯瞰する資料展示
1953年に新東宝でキャリアをスタートした井上さんは、その後の東宝時代を通じて円谷英二さんを支え、アルファ企画設立後も長く特撮美術監督として従事、特撮美術に文化としての大きな発展をもたらしました。
井上さんが遺した多数の資料からアーカイブを作成し、学生時代から晩年まで、同時代の表現者たちとの関係や、その人物像に迫ります。また、未公開資料を含め、かつてない規模で展示を行い、より広く深い調査をもとに作家像を俯瞰します。
月面基地 イメージボード、『怪獣総進撃』(1968)より © TOHO CO., LTD.
●見どころ2 井上泰幸さんの美術表現を探る
井上さんは特撮美術・デザインに加え、怪獣「ヘドラ」のデザインなども幅広く手がけています。井上さんの仕事に一貫する特徴は、綿密な調査に基づき、空気の層まで取り込むほどの徹底的な再現性です。
ヘドラ デザイン画、『ゴジラ対ヘドラ』(1971)より © TOHO CO., LTD.
その手段として、図面や絵コンテを描き、予算計画を俯瞰できるオリジナルの「セット設計」を駆使し、「水落とし装置」や東宝撮影所の大プール設計など、多様な手法を遺しました。
本展では、市街地から宇宙まで様々なシーンを現実化し「実装」した井上さんの仕事を、台本や制作の進行表、現場写真、スケッチや図面、ミニチュア、プロップなど数百点を通して紹介し、その表現の独創性を探ります。
緯度0基地 設定俯瞰図、『緯度0大作戦』(1969)より © TOHO CO., LTD.
怪獣・建造物設定対比図、『モスラ対ゴジラ』(1964)より © TOHO CO., LTD.
セット設計(部分)、『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』(1967)より © TOHO CO., LTD.
●見どころ3 井上さんの特撮文化を継ぐクリエーターが作るメインビジュアルと大型ミニチュアセット
本展は、井上さんの仕事に大きな影響を受けて特撮文化にかかわるクリエーターたちの協力を得て作られています。
特撮研究所、アニメ特撮アーカイブ機構(ATAC、理事長:庵野秀明)の企画協力、樋口真嗣さんによるメインビジュアル(近日公開)に加え、井上さんの愛弟子であった特撮研究所の三池敏夫さんが『空の大怪獣ラドン』(1956)で知られる西鉄福岡駅周辺のミニチュアセットをアトリウム空間に再現します。背景画は島倉二千六さん、ミニチュア制作は老舗マーブリングファインアーツが担当し、井上さんの綿密な仕事が令和の技術で蘇ります。
岩田屋周辺ミニチュアセットのメイキング写真、『空の大怪獣ラドン』(1956)より © TOHO CO., LTD.
福岡・岩田屋周辺ロケハンスケッチ、『空の大怪獣ラドン』(1956)より © TOHO CO., LTD.
特撮映画に参加するような記念撮影を楽しみつつ、当時の特撮現場を体感し、優れた存在感を持つ昭和の「特撮の技」をご覧ください。
ゴジラ対クモンガ イメージボード、『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』(1967)より © TOHO CO., LTD.
●「生誕100年 特撮美術監督 井上泰幸展」
会場:東京都現代美術館 企画展示室 地下2F
会期:3月19日(土)~6月19日(日)
休館日:月曜日(3月21日は開館)、3月22日
開館時間:10:00~18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
観覧料:一般1,700円/大学生・専門学校生・65歳以上1,200円/中高生600円/小学生以下無料
・出品予定作品・資料
井上さんのスケッチ、デザイン画、絵コンテ、記録写真や資料、完成映像、撮影で使用したミニチュアやプロップ、『空の大怪獣ラドン』を再現したミニチュアセット(フォトロケーションとしてアトリウムに設置)、『ゴジラ』(1954)、『空の大怪獣ラドン』、『キングコング対ゴジラ』、『海底軍艦』、『ウルトラQ』、『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』、『日本海大海戦』、『ゴジラ対ヘドラ』、『日本沈没』、『惑星大戦争』、『ゴジラ』(1984)、『連合艦隊』、『竹取物語』など、作品点数約500点を予定
海岸のゴジラ イメージボード、『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』(1967)より © TOHO CO., LTD.
主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館、朝日新聞社
助成:令和3年度文化庁文化芸術振興費補助金メディア芸術アーカイブ支援事業
企画協力:特撮美術監督 井上泰幸 実行委員会、特撮研究所、アニメ特撮アーカイブ機構
協力:東宝 ほか
担当学芸員:事業企画課 企画係 森山朋絵
特設サイト:https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/yasuyuki-inoue/
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