Vol.264 『関ヶ原』
マスコミ試写にて『関ヶ原』を鑑賞。司馬遼太郎さん原作の大ベストセラーを映画化した、日本史上最大の合戦を描いた時代劇。
豊臣秀吉に見出された石田三成は、五奉行の1人として豊臣政権の一翼を担っていた。佐和山に城を持ち、島左近を家来とした三成は己の信念・理想を持って豊臣家を支えていく。しかし秀吉の死が迫ると、家康は大名たちを巧みに取り込み、天下取りを狙い始める。そして秀吉、続いて大老の前田利家が亡くなると、いよいよその本性をむき出しにする家康が上杉討伐に乗り出すと、三成は上杉家家臣・直江兼続と図り、徳川を挟撃するために挙兵する。1600年9月15日。総勢約20万人による天下分け目の合戦が関ヶ原で始まる……。
昨年の大河ドラマではわずか数十秒で終了した関ヶ原の戦い。実はこれまで、この戦いを真正面から描いた映画はありませんでした。日本全体を2つに分けて行われた、そのスケールの大きさもさることながら、戦いにいたるまでの経緯、参戦した武将たちの状況など、描かないといけないことが多すぎることなどがその原因だと思います。
しかしもっとも大きい要素としては、この戦いで戦国時代という一つの時代が終わる事件ではあるものの、あくまで歴史の流れの途中経過であって、関ヶ原の戦いで物語の結末を迎えるという形にするのが難しいことではないでしょうか。
というのは、このような歴史物は勝者の視点で描かれることが普通であり、その場合、その後、幕府を開いたり、大坂の陣といった戦いがあることなどから、関ヶ原の戦いが結末というまとめ方がしにくいわけです。あくまで勝者の視点では、ですが。
本作では、三成を主役とし、家康を野望に燃える悪役のような立ち位置とし、他の大名たちの諸事情を極力絞り込みながら、三成VS家康部分をクローズアップさせた物語にしています。原作を読んだ方は知っていると思いますが、原作では関ヶ原の戦いに関わった武将たちの背景、そしてその調略といった要素が非常に多く、戦いの全体像が非常によくわかるようになっている分、エンターテインメントにはしにくい内容となっています。
そこにばっさりとナタを入れて消化しやすくし、映画という尺で魅せる形に昇華させているのが素晴らしい。しかも、三成を主役とすることで、彼の人生のクライマックスが結末になる形となり、物語としてきちんと完結できるようにしています。
ここで問題となるのは、三成自体の魅力です。これまでの描かれてきた三成というのはくそ真面目で融通が利かず、人を怒らせる天才のような人物像が多く、多くの武将たちをねじ伏せ、最終的に天下を取るためにガマンにガマンを重ねる、カリスマ的存在の家康に比べて登場人物としての魅力が薄いという難点があります。
しかし本作では、誰よりも正しい志を守り、豊臣家への忠義の熱い武将として三成が描かれます。それゆえ、「三成に過ぎたるもの」と言われた島左近を家来として召し抱えるシーンが静かなやり取りながら、冒頭部分のクライマックスになりえる迫力を持っていました。そしてそれが、この物語の中の三成像を代弁するシーンともなっています。また、原作にも登場する架空の女性・初芽との密やかな愛の描き方も、本作での三成像を彩るスパイスの一つとして効果的に配置されています。
豊臣政権を仕切る頭脳明晰で理知的な三成と、豊臣家をないがしろにして天下を狙う家康を許せない熱い正義の心を燃やす三成という、静と動を併せ持つ三成を演じた岡田准一さんの演技もかなりはまっていました。三成というイメージからすると、ちょっと立派すぎるかなという気もしましたが、その時々の感情を演じ分け、本作では様々な顔を持つ三成をよく表現していたと思います。
対する家康ですが、役所広司さんのどっしりとした演技がよくはまっていたと思います。武将を調略するときの物腰のやわらかさ、恫喝のすごみ、野望をぎらつかせる本性を現した顔。秀吉亡き後、天下を手にするために行った豊臣家臣たちの分断、北の政所の取り込みなど、家康自体、そうとうできる役者だったと思いますが、いよいよ自分の時代に突入するという家康をきちんと演じきっていましたね。
合戦のシーンの迫力も見事でした。合戦開始時には圧倒的に有利な陣形となっていた三成率いる西軍と、武将たちの調略によって勝機が見えている家康の東軍。いざ合戦が始まってみれば戦に参加しない大名が多く、その対応に動く三成や、東軍総大将として戦局を見切った、歴戦の武将然とした家康の対比も非常におもしろく、かなり見応えのある合戦シーンに仕上がっています。
そして戦いが終わり、家康と対峙する三成のシーンへと続いていくわけですが、このシーンが発する重さが、観客それぞれに様々な問いかけをしてくる名シーンになっていると私は感じました。短いシーンではありますが、戦国の世を駆け抜けた2人の武将の生き様がそこに映し出されていた。そんなふうな印象を受けました。
『関ヶ原』は、8月26日より全国ロードショーです。
©2017「関ヶ原」製作委員会
![]() | 『履いてください、鷹峰さん』第1話 生徒会長・鷹峰さんの生おっぱいを偶然見てしまう白田くん |
![]() | 「スパイダーマン」シリーズ最新作『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』2026年夏公開! |
![]() | 『赤×ピンク』芳賀優里亜のラブシーン公開・禁断の予告編解禁! |
![]() | 『ユア・フォルマ』第1話 襲撃事件の嫌疑をかけられてしまったハロルド |
![]() | 『最強の王様、二度目の人生は何をする?』第1話 無力な赤子として魔法世界に転生した史上最強の王様グレイ |
![]() | 『この恋で鼻血を止めて』第1話 宇宙生物が体内に入り込み、退屈すると死ぬ体になってしまうモカ |
![]() | 『処刑少女の生きる道』第4話 アカリの能力を【時】の純粋概念だと確信するメノウ |
![]() | 声優・儀武ゆう子、ポプラで一日アルバイト。時給は1,000円 |
![]() | 『えんどろ~!』第8話 魔王にさらわれたローナ姫がたどる運命は? |
![]() | 『ラブライブ!スーパースター!!』描き下ろしイラストのPC壁紙&スマホ待ち受け画像プレゼント |