Vol.233 『ターミネーター:新起動/ジェニシス』
TOHOシネマズ日本橋にて『ターミネーター:新起動/ジェニシス』を鑑賞。『ターミネーター4』から3部作の予定が、製作会社の倒産で続編が頓挫。5作目として新たに仕切り直した作品。今回TCX、DOLBY ATMOS 3Dで鑑賞。
人工知能スカイネットに支配された近未来。ジョン・コナー率いる人類の抵抗軍は機械軍に勝利し、スカイネットの支配から解放されようとしていた。敗北を悟ったスカイネットは、ジョン・コナーの母サラ・コナーを抹殺し、歴史を変えるべくタイムマシンでターミネーターT-800を1984年に送り込む。何も知らないサラ・コナーを守るために送り込まれた戦士カイル・リースは、1984年で別のターミネーターT-1000に襲われる。その危機を救ったのは、かよわい女子大生のはずのサラだった……。
今回の話はこれまでのシリーズの続編ではありません。かといって、リメイクでもリブートでもなく、シリーズの世界観・キャラクターを再構築し直し、1984年から新たな『ターミネーター』を作り直していると言えばいいでしょうか。基本的には『ターミネーター』と『ターミネーター2』をベースにしつつ、新しい物語を作ったというイメージです。
1や2を観ている人には、見覚えのあるシーンが続々登場するわけですが、そこから徐々に観たことのない展開へと発展していきます。そのシナリオ構成はよく研究して練られたシナリオになっていて、1・2の後、本作につながってもおかしくないシナリオです。
さらに今回は3以来となるシュワルツェネッガーがT-800役(実際は3のときはT-850)として出演するわけですが、当然年を取っています。それを吸収するための仕掛けもあり、物語として破綻しない工夫は取られています。もちろんつっこみどころがあることはあるのですが、2本を1本にまとめてさらに新展開が待っているので、深く考える間もなく進行していきます。
当然のことながら忙しいです。1の敵T-800、2の敵T-1000。あれだけ苦労した敵がもはやザコキャラw 2までの物語は本編の半分くらいでしょうか。その間、1・2を観た人は、懐かしい映像を新しい技術で観て楽しむことができます。1984年にT-800が送り込まれたシーンなどは、その再現性の高いこと高いこと。「散歩にはいい夜だ」といったセリフまで聞けます。
その冒頭シーンから少しずつずれていく話は、1997年に起こるはずだった審判の日をずらし、そして2017年へと物語が続いていきます。ここで一つ、大きなミスが生まれます。ターミネーターと人間の戦いは、まだ人類が手にしていないテクノロジーで作られた、未知の機械との戦いに、その時のテクノロジーで挑むからこそ説得力が生まれるのです。
だからこそ、1も2も、最終決戦の場はその熱気や蒸気といったものが感じられるような実際にあるだろうという工場であり、そこで通用しないライフルやショットガンといった類いの武器で立ち向かう。それが醍醐味の一つなんです。
ターミネーターにしてもそうです。未来から武器は持ち込めない。だからその時代の武器で戦う。大型バイクにまたがったシュワルツェネッガーが、片手でショットガンをくるくる回しながら弾丸をぶっ放す。そこに現実感と現実離れした動作がからみあって、そのすごさや怖さが生まれる。
その戦いを未来に持っていったのは、私は失敗だと思います。初期作品の頃には一般的ではなかったインターネットや携帯端末といったものであふれ、どんなものもコンピュータチップで制御されている現代に、80年代の設定のままのターミネーターを持ち込んでも、その整合性を取るのはかなり難しいと思います。
単なる殺人マシンであったターミネーターが、オーバーテクノロジーとなる装置を作れるわけはないですし、未来のコンピュータチップがあればなんでもOKといったシナリオや、磁気やらナノマシンやらといった、身近ではない技術で展開されても、現実世界からかけ離れるだけで、リアリティが薄まるだけだったなと。ちょっとSFしすぎかなと感じました。
今回、テレビシリーズは別にして、サラ・コナーを初めてリンダ・ハミルトンではない女優、エミリア・クラークが演じたわけですが、アクションはかなりがんばっていたと思うのですが、どうにも顔が幼く見えて、戦士というイメージではなかったのが気になりました。外国人のわりに童顔ですよね。28歳には見えませんでした。
ジョン・コナーやカイル・リースはまあそれほどイメージ離れはしてませんでしたが、カイルくんはマイケル・ビーンのほうが機械に支配された未来からきた戦士というイメージがありましたねぇ。なんだろう。ハングリーさが感じられないというか、ギラギラ感が足りなかった気がします。
3Dについてはそれを意識したわざとらしい映像がないのに、立体感のあるところはきちんと立体になってましたし、やっと自然な3D映像の映画になってきたなというところでしょうか。また、今回Dolby ATMOSで鑑賞しましたがやはり音響はすごいですね。TOHOシネマズ新宿のお披露目のときにデモ映像を観ましたが、映画全体で体験するのは初めてで、その音の配置などはかなり迫力がありました。破片が耳の横を通り抜ける空気を斬り裂くような音とか、音響も立体的で楽しめました。
作品としては、さきほども書きましたが、よく練られたシナリオになっていますし、1・2を観た人には楽しめると思います。しかし、再構築し、ここから新しい物語が始まるという点でいうと、では、1や2を観ていない方が本作を観て、我々が1や2を観たときの衝撃を受けるかというと、そこまでではないかなというのが正直な感想です。
シナリオもアクションも、映像も音響も楽しめますし、映画館で観ておく映画ではありますが、過度な期待は持たず、余計な詮索をせずに話を楽しむのがいいと思います。
『ターミネーター:新起動/ジェニシス』は全国公開中です。
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