Vol.179 『アナザー Another』
TOHOシネマズ市川コルトンプラザにて『アナザー Another』を観賞。綾辻行人原作ホラーの実写映画化作品。
いわゆるJホラーと呼ばれるジャンルに通じる、不条理な呪いに巻き込まれる登場人物たちがいかにその怨念を断ち切るかを描いた作品。夜見山中学3年3組には一人死者がまぎれこんでおり、そのためにそのクラスの者、その関係者が次々と死に見舞われる。現象とよばれる連続した死が始まったとき、それを防ぐすべが誰にもわからない……。ただ一つ有効とされていたのが、死者の分、一人を初めからいなかった者とすることだったのだが、主人公が転校してくることで現象が始まってしまうのだった。
今年1~3月に放送されていたTVアニメ『Another』の出来がなかなかよかったので、実写版がとても気になっていました。あの世界を実写でどのように描くのか。その1点で観に行った感じ。
結果として、原作を読んだり、アニメ版を観ていたりしたかどうかで、かなり印象が変わる作品ではないかなぁという印象を持ちました。1クールにわたって放送されていた作品を2時間にまとめるにはかなり大胆に手を入れなければならないと思うのですが、最初から最後まで、様々なエピソードを端折ることなく入れ込もうとしたためにそれぞれを深掘りできずにダイジェストのようなシナリオになってしまったという印象でしょうか。
先日観た『るろうに剣心』のシナリオが、かなりよくまとめてあったので、なおさらこのような印象になったのかも知れません。小説にしろコミックにしろ、長い原作を映画の尺にまとめるのはいろいろ難しいですね。しかし、アニメ版を観てなかったらこれでだいじょうぶなのかなぁという感じもあり、その点が判断に迷うところです。
さて、この作品はホラーなので、当然のことながら怖くないといけません。『リング』のような恐怖を感じるかどうかが最大のポイントなわけですが……この点が今ひとつでした。というのは、根本の原因がよくわからないことにあると思います。
死者の弔い方を間違えたがために、3年3組に死者がまぎれこむようになった。そしてその現象によって死んだ者がまた死者としてまぎれこむ。ここまでいいのですが、死者がまぎれこむとなぜ現象が起こるのか?がよくわからない。ここに怨念とか呪いといった概念が感じられないため、Jホラーというよりもパニック映画のような印象を受けました。
そもそもの話として、そういう現象が起こる危ないクラスだとわかっているのに、転校生をそこに編入する学校というのが理解できない(^_^;) 1組でも2組でいいのになぜわざわざ3組に入れるのか……。
それからその死に方についても、どうも痛くない。映像を観て、観客が痛い!と思う映像にいたっていない。突然不条理な死を迎えるというと『ファイナル・デスティネーション』から始まるシリーズがあるわけですが、そこまでのインパクトがなく、ただただ死んでいくだけという雰囲気。もちろんそうした映画を観たことがない人にはそれなりのインパクトがあるとは思うのですが……。クライマックスシーンでは次々と人が死んでいくのですが、ここにそのインパクトがなく、描かれ方もかなり駆け足という印象を受けたのが少々残念です。
主人公たちが中学生という設定もちょっと無理があるような気がします。これが高校生だったらありえるとは思うのですが、中学生にここまでの動き・考え方ができるのかどうか……こうした基本的な設定や背景などにリアリティがないと、その上にどんな映像を乗せても説得力が出てきませんよね。そういう意味で、いろいろ細かい点で残念なことが積み重なってしまった作品という気がします。
結末については、私はアニメ版よりもこちらのほうがすっきりしていていいと思いました。なるほど、こういうことになるのか……と。だからこそ、そこにいたる話が少しもったいなかったなという気がします。
『アナザー Another』公式サイト:http://another-movie.com/
全国公開中
→『アナザー Another』の記事を探す
©2012 映画『Another アナザー』製作委員会
コラム, ホラー・スプラッタ映画
2012/09/10 03:16 MOVIEW