Vol.147 『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』
マスコミ試写にて『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』観賞。マーベル・コミック最初のヒーローを映画化した作品。
第二次世界大戦下の1941年。アメリカ軍の秘密実験“スーパーソルジャー計画”によって強靱な肉体を得たスティーブ。しかしその力は活用されることなく、アメリカ国内での戦費獲得のための国債販売のマスコット的存在“キャプテン・アメリカ”となっていた。そのスティーブ一行が戦地の慰問に訪れたとき、親友の所属部隊の窮地を知り、単独で救出に向かう。それは、ナチスのカルト集団ヒドラ党とのすさまじい戦いの幕開けであった……。
様々なアメリカンヒーローが映画化されている中で、なぜこのキャプテン・アメリカがこれまで映画になっていなかったのかがとても不思議な感じがします。しかし、この作品を観ていると逆に、これまで映画化されなくてよかったとも思います。現在の映像技術がようやくこのコミックの映画化実現にたどりつけた、そんな感じでしょうか。
現代や未来を舞台にしたヒーロー作品はたくさんありますが、戦時下を舞台にしている点がとても新鮮。とはいっても、ヒドラ党の武器を中心に近未来的な武器や兵器もたくさん出てきますし、まったく古くささは感じません。
このところ当たり前のように作られるようになった3Dによる効果もとてもいい感じ。3D映画によくありがちな無理矢理立体感を強調するような構図(たとえば手前に向かって何かが飛んでくるといったような場面)はほとんどないのが好感が持てます。3Dを意識するがゆえに映画全体がその視点でしか作られていない作品が多すぎる……。
ヒーロー物といえば要となるのはアクションですが、これが迫力満点。特にバイクチェイスシーンがかなりいい感じでしたね。『スター・ウォーズ ジェダイの復讐』(いまは『ジェダイの帰還』と変更されたようですが)の森でのチェイスシーンや、『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』のバイクチェイスを彷彿とさせる映像になっています。
余談ですが、『スター・ウォーズ』はいま3D化作業をしているとか……個人的には昔の映像をいじくりまわすのはちょっと反対です。CGなどを加えた特別編を観たときも思いましたが、すでに完成している作品に変更を加えるぐらいなら、今の技術でリメイクすればいいのに、と思います。おっと話が逸れました。
戦時下におけるヒーロー物ということで、ちょっと暗めの作品になっているのではないかと思ってましたが、ところどころではさまれるユーモアもあり、そういう暗さはなく、ワクワクしながら観ることができます。ユーモアという点では……なんといってもトミー・リー・ジョーンズがいい! 『MIB』ほどギャグがあるわけではありませんが、一つのセリフですべて持っていってしまいました。いやぁ、さすがというか、キャラクターを押さえたシナリオの勝利というか。
あと、ところどころにマーベルコミックファンがにやっとするような要素が入っていたりします。『アイアンマン』のトニーの父親が出ていたり、リアクターがどうたら言っていたり、軍事産業を担う企業の根元はこの映画の中にあるのだなぁということがわかったり。
この映画の音楽はアラン・シルヴェストリが担当していますが、とても重厚なスコアが多く、これもなか仲良かったです。BGMというものが映画の効果を高めるのにとても重要なのだと再認識させられました。
21世紀に入ってから、この作品を含め、ヒーロー映画がとても増えたような気がします。それはもちろん観客が求めているからこそだと思うのですが、9.11以降、アメリカの正義への渇望というか、そうした欲求が極度に膨らんでいるのではないかという気がして少し心配です。こうした映画で自分たちの行いが間違っていないことを確認している……そんなふうに思うのは考えすぎでしょうか? もちろんこの作品にそういった政治的メッセージが含まれているわけではありませんが。
ヒーロー映画としての爽快感、戦争映画としてのアクション、そういった要素がぎゅっと詰まっているこの『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』は、10月14日(金)から丸の内ルーブルほかにて全国拡大3Dロードショーです。
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コラム, 特撮映画
2011/09/11 10:08 MOVIEW