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Vol.118 『レイズ・ザ・タイタニック』

観賞映画振り返りコラムの47回目は1980年に観た『レイズ・ザ・タイタニック』。今は日比谷シャンテになっている日比谷映画で観ました。この年の正月映画としてはキューブリックの『シャイニング』、マックィーン主演の『ハンター』などが話題作でしたが、ポスターに使用された海底から浮上するタイタニック号のイラストが心を掴んで離さず、この作品を観ることにしました。
この浮上するシーンが実際の映像でどう描かれているのか? それが気になって気になって……。昔はこういうポスタービジュアルなどに惹かれて映画を観たり、書籍を買ったりということがよくありましたが、最近はそこまで心惹かれる絵が少なくなった気がします。映画ポスターはほとんど写真のコラージュですし……。


この映画の肝は、なぜタイタニックを引き上げなければならないのか?に集約されます。当時は冷戦時代のまっただ中で、タイタニックを引き上げる背景として米ソの対立が描かれます。処女航海で沈没したタイタニックに積まれていた稀少鉱物“ビザニウム”。これがアメリカのミサイル防衛システムに必要な代物なのでタイタニックを引き上げよう!という話……。もうこの時点で、すでに話は破綻しかかっている予感が……。
どれほど稀少な鉱物といっても、そのタイタニックに積まれたものだけしかないということはありえませんし、4000メートルの海底からタイタニックを引き上げるより、新たな鉱脈を探すほうがよほど現実的な気がします。
またそのタイタニック引き上げを知ったソ連の妨害があったりするわけですが、これが今一つ緊迫感がない。さらに、途中で引き上げ期限が繰り上がったりして緊迫感を盛り上げようとするのですが、このタイムリミットも説得力が欠ける感じ。原作にあった様々なエピソードがばさっと切られてしまっていて、なんとも中途半端なイメージでした。
ただ、タイタニックが実際に海面に浮上するシーンは迫力もあって期待以上の出来でした。ミニチュアだけでなく、実際にタイタニックに似せた船を沈めた後、浮かび上がらせて撮影した映像を用いているので、そのリアリティはかなりのもの。このシーンを観たいがために映画館へ行った身としては満足できる映像でした。
映画を観終わった後、背景とかストーリーとかはもはやどうでもよくて、このシーンの印象だけで帰ってきた記憶があります。製作側もこのシーンを見せたかったんだろうなぁという力の入りようというか。スクリーンで観ないとその迫力は伝わりませんね。この映画、DVDが出てないのはそういう理由なんですかね?
この映画が撮影されたころは、まだ沈んでいるタイタニック号は発見されておらず、船体が二つに割れてしまっているという事実は知られていなかったこともあり、氷山との衝突でできた亀裂をふさぐだけで船としての形のまま引き上げているわけですが、この引き上げられたタイタニック号がニューヨークへ到着し、ようやくその処女航海を終えるというシーンはいろいろな意味で感慨深いものがありました。
映画としてはつっこみどころがたくさんある映画ではありましたが、浮上シーンだけは観て損はないと思います。CGなどがない時代の苦労がしのばれる作品です。
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