Vol.103 『ヤマトよ永遠に』
観賞映画振り返りコラムの40回目は1980年に観た『ヤマトよ永遠に』。公開初日に浅草東映パラスで観ました。
『宇宙戦艦ヤマト』の劇場版第3作ではありますが、一種のパラレルワールドとでもいいましょうか。本編は前作の『さらば宇宙戦艦ヤマト』で完結したにも関わらず、そのテレビ版『宇宙戦艦ヤマト2』で違うラストにし、さらにTVスペシャルの『宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち』を経てこの作品につながります。『さらば宇宙戦艦ヤマト』のコラムのときに、以降の作品は別の話と書いたのはそういうわけです。
このあたりがご都合主義と批判され、それまでのファンが離れる原因になったこともまた事実です。現に、この作品の後に作られたテレビシリーズ『宇宙戦艦ヤマトIII』は当初1年間の予定で製作されたにも関わらず、半年の放送となってしまったのはそういったファン離れのせいで視聴率が低迷したせいではないでしょうか。
話としてはこれまでのヤマトとは違うことをいろいろ試しています。どこかの星の女王様を訪ねるということがなく、森雪がヤマトに乗船しなかったり、また、デスラーが登場しないなど、新しい挑戦をしている感じがあるのですが、これが正解だったかどうかはわかりません。
森雪が乗船しない代わりに『宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち』で預かったサーシャがヤマトに乗ったりするのですが、たった1年で大人になるとか……イスカンダル人の血が入っているからといういいわけをしていましたがどのくらいの人が納得したんでしょうか。別にその役はサーシャじゃなくてもつとまるわけで、ちょっと無理矢理感がありましたねぇ。
SF考証として豊田有恒さんを入れたりして、リアリティのある世界観を目指していた(実際にリアリティがあったかどうかは別の問題(^_^;))シリーズだけに、こうしたアニメだから許されるといったようなことをするのはどうかなぁと思います。
画としてのクォリティはさらに高くなっていて、リアルな地球、重厚感のある重核子爆弾などは、当時のSF映画でよく見られたマットペインティングのレベルに達していたと思います。当時、これほどの画を使ったアニメは他になかったのではないでしょうか。
あと特筆すべき点は、上映前から発表されていた謎のワープ・ディメンション方式。公開まで秘密とされていたこの上映方法の正体は、映画の途中で画角が変わり、音響が変化するものでした。ビスタで上映されていた映像が途中からシネスコに変わり、そこからモノラルの音声が4chステレオの立体音響に変わる。それに加え、アナログCGといってもいいスキャニメイトも用い、視覚・聴覚の両方から臨場感を高めるという試みでした。
ビスタがシネスコに変わることによって、目に飛び込んでくる情報は確かに増えます。簡単にいうとアナログ放送の2:3で見ていた途中から地デジ放送4:9になったようなもの。また、モノラルの音声が4chに変わるというのは音の奥行き感は立体感が圧倒的に変わります。が、はたしてそれが本当に効果的であったかというと少々疑問でした。
確かに視野角に対する情報は増えましたが、そこから“すごい!”という印象は受けませんでしたし、だったら最初から最後までシネスコ、4chで作ればいいのでは?とも感じました。聞いた話では、ビスタからシネスコに変わるのに、左右は広がったが、天地が縮まったという映画館もあったらしく全面的に成功とは言えなかったようですし、その変化に気づかなかった人もいたらしいです。試みとしてはおもしろかったかも知れませんが、観客全員が驚くサプライズには成り得なかったようで……。
それから、『さらば宇宙戦艦ヤマト』のときからどうも勘違いがあるようなんですが、登場人物が死ぬことで感動を与えようとするきらいがこのシリーズにはあります。『宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち』でもそうでしたし、この後の作品もそう。人の死で感動させようとするのは私は安易だと思います。その点がこのシリーズのマイナス点として定着してしまったのはちょっと残念です。
→『宇宙戦艦ヤマト』の記事を探す
→アニメの記事を探す
コラム, 劇場版アニメ・イベント上映
2010/04/25 13:33 MOVIEW