Vol.99 『ザ・ウォーカー』
完成披露試写にて『ザ・ウォーカー』を観賞。ジョエル・シルバー製作、デンゼル・ワシントンとゲーリー・オールドマン主演の近未来映画。
戦争によって文明が滅びてから30年もの時が過ぎたアメリカ大陸。焼き尽くされ、荒廃した世界を歩く一人の男・イーライ。彼はひたすら西を目指す。1冊の本を携えて……。そしてその本を探し続けている男・カーネギー。汚染されていない水を独占し、街を牛耳る彼は、その本をイーライが持っていることを知り……。
イーライはなぜ西を目指すのか? その本にはどのような秘密があるのか? この映画には様々な謎が提示され、それが少しずつひもとかれていく展開になるわけですが、すべてが明らかにならないところがいいですね。なんていうか、主人公の謎めいた部分に対して多くを語らず、観客のイマジネーションにまかせているという感じでしょうか。
戦争からここまでどのような生き方をしてきたのか? 映画で示される映像では、過酷な時間を過ごしてきたことは想像に難くないわけですが、それを具体的に示さないことで、よりミステリアスな雰囲気が作り出され、その人物像に厚みが出ています。
さらにいうとデンゼル・ワシントンの演技、それからアクションのすばらしさがその厚みをさらに増しており、ゲーリー・オールドマンが演じる悪役との駆け引きでその魅力がさらに深まります。この映画、この2人だからこそ、その緊張感あふれるサスペンスに仕上がったと言っても過言ではないでしょう。
この2人以外の出演者もいい役者が揃ってますね。ジェニファー・ビールスやマルコム・マクダウェルは久々に観た気がしますが、こうした方々が脇を固めている分、その周囲の世界観がしっかりと確立して、主役2人が引き立っています。それにしてもちょっとかわいそうなのはトム・ウェイツ。役名が「Engineer」って……(^_^;)
この映画、ちょっと日本人には感覚的に難しい部分もありますが、一般的な知識があればさほど問題はないかと思います。それよりも、話が進むにつれて解き明かされている謎を楽しめますし、あっと驚くような仕掛けも用意されているのでそちらを楽しむのがいいでしょう。もちろん、なんの前知識も入れないで観たほうがより楽しめると思います。
それにしてもこの邦題はどうかなぁという気もします。配給が角川だから“ウォーカー”?(^_^;) 松竹と共同配給ですがね。
『ザ・ウォーカー』は6月19日から丸の内ピカデリーほかにて全国ロードショーです。
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SF映画, コラム
2010/04/11 03:11 MOVIEW