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Vol.88 『ウルフマン』

狼男 リミテッド・エディション完成披露試写にて『ウルフマン』観賞。ベニチオ・デル・トロとアンソニー・ホプキンス、2人のアカデミー賞男優を配して贈る、1941年製作の名作ホラー『狼男』リメイク作品。
リメイクというと、過去の作品に新しい解釈を加えたり、現代科学などを持ち出してストーリーをいじるといったことが行われたりしますが、この作品では『狼男』の登場人物、その人物像、人間関係などを掘り下げ、物語を再構築し、これからの狼男伝説のセオリーともいえるストーリーを組み立てています。


R15+に指定されるほど、どちらかというとグロい映像もままありますが、単なるクリーチャーが恐怖をもたらすホラー映画とは一線を画し、サスペンス色の強い映画となっています。その大きな要因は物語に隠された謎と、その伏線の張り方にあり、全編を通してドキドキ感あふれる展開が楽しめます。
また、悲運にも狼男となってしまう主人公のローレンスと、その兄の婚約者・グエンとの間の切ない想いがさらに物語に深みを与え、人間とオオカミの間で揺れ動くローレンスの心情をうまく表現してくれます。人間でありながら獣の本能がうごめく……ほんの一瞬の演技ではありますが、そのシーンでのデル・トロの演技はすばらしかったです。
もちろんローレンスの父親役であるアンソニー・ホプキンスの存在感もすばらしく、もはやホラーというジャンルを超えた人間ドラマを観ることができます。
狼男といえば、やはり話題になるのが変身シーンですが、この作品では狼男を作らせたら右に出る者はいないであろう、あのリック・ベイカーが特殊メイクアップデザインを担当。ベイカー自身の作品である『狼男アメリカン』を遙かに凌駕する変身シーンを作り上げました。これは一見の価値ありという映像です。
1941年の『狼男』ではその当時が舞台となっていましたが、本作では19世紀末のイギリスが舞台となっており、ロンドンのシーンでの臨場感がすごかったです。まるで100年以上前にタイムスリップしたかのような錯覚に陥ります。20世紀初頭のロンドンの風景を想像したときに思い浮かぶ風景。それがそのままスクリーンに映し出されているという感じ。
古典ホラーをベースにし、100年以上前の風景を目にしていながら、やはり映像としては21世紀の映画……この『ウルフマン』は名作を鮮やかに現代のテイストに合わせて昇華させた秀作だと思います。
あっ、もちろんホラーなので、ドキッとするシーン、脅かす音響も多々ありますので、そういった映画が苦手な方はご注意ください。
『ウルフマン』は4月23日より、TOHOシネマズ日劇ほか、全国ロードショーです。
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