Vol.76 『戦国自衛隊』
観賞映画振り返りコラムの26回目は1979年公開の『戦国自衛隊』。キンゲキで観賞。
『犬神家の一族』から始まった角川映画はミステリーを中心とした映画を製作していましたが、このころのSFブームもあってか、SF映画として初めてこの『戦国自衛隊』が作られました。連日放映されるテレビCM、戦国時代に現代兵器が登場するという奇抜なアイデア、とても印象的だった「歴史は俺たちに何をさせようとしているのか?」というキャッチコピーもあり、公開前からこれは観たい!と思わせる要素が盛りだくさんでしたね。
原作は半村良さん。架空戦記小説としては元祖とも言える『戦国自衛隊』よりはもっとSFしている『亜空間要塞』のほうが個人的には好きでしたが、あちらは映像化するのは難しかったのかなぁ。『戦国自衛隊』なら基本的には時代劇ですから、特撮技術もそれほど必要ないですし、作りやすかったのかも。
しかし映画の内容自体は原作とはまた違った内容になっていて、タイムスリップした自衛隊員たちの青春群像劇という形のストーリー。時空に引き裂かれたカップル、現代ではなしえない野望と欲望、特殊な環境下に置かれた人間たちの混乱と行動……タイムスリップした自衛隊がただ戦うだけのアクション映画ではなく、隊員それぞれのドラマをきちんと描いているあたりがすばらしかったです。さらに言うと、その隊員たちのキャスティングが、また個性派揃いというのがとても合ってましたね。
とはいえ、メインはやはり武田軍と自衛隊の戦い。数千人、数万人の侍たちを相手に、現代兵器がどこまで通用するのか? 現代のテクノロジーは戦国時代の上をいくのか? この戦いのシーンが迫力満点。倒しても倒しても新手が登場する敵に対し、燃料、銃弾などに限りのある自衛隊。先が読めない戦闘シーンが40分も続くというのはこれまでになかったんじゃないでしょうか。
伊庭役の千葉真一さん、武田勝頼役の真田広之さんなど、JACの方々のアクションシーンも見ものですが、ポイントごとにそれぞれの自衛隊員の見せ場や、特別出演となる俳優とのからみなどが挿入され、これだけ長い戦闘シーンなのにずっと飽きずに、ぐいぐい引き込まれていくのはシナリオの勝利だと思います。
あと、この作品で注目すべきは音楽だったりします。これまでの映画音楽というと、主題歌などはあっても基本的にはインストゥールメンタルなBGM。しかしこの映画では様々な歌手・グループによるポップな歌詞入りの曲がいろいろと使われています。それがさきほど書いた青春群像劇としてのこの映画にぴったりとはまってました。
この映画の挿入歌として使われた「スクリーンに雨が降る」は、いまでももっとも好きな曲の一つです。まあ、サントラにBGMが1曲も入っていないというのはちょっとどうかとも思いますが(^_^;)
いま振り返ると、SF映画というより、かなりカルト映画っぽい感じもしますが、日本映画もここまでのエンターテインメントを作れるという見本のような映画だったと思います。
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SF映画, コラム
2009/12/31 01:14 MOVIEW