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Vol.43 『天使と悪魔』

天使と悪魔 ムービーコンパニオン有楽町マリオンでの完成披露試写会にて『天使と悪魔』鑑賞。『ダ・ヴィンチ・コード』の続編で、前作に引き続きトム・ハンクスがラングドン教授を演じています。
前作ではキリストの秘密を暴き、ヴァチカンを敵に回してしまったラングドン教授が今作では逆に、ガリレオ・ガリレイの残した暗号を解き、秘密結社イルミナティからヴァチカンを守るために活躍するサスペンスアクション映画になっています。続編でありながら、前作を観ていなくても楽しめる作りになっているのがすばらしい。


実は、前作『ダ・ヴィンチ・コード』を個人的にはそれほど高く評価していません。一般的にもキリスト教のことをよく知らないと理解できないなどという批評を目にしたりしますが、前作の問題はそこではないと思っています。レオナルド・ダ・ヴィンチが残した暗号がキリストに配偶者がいたことや子孫がいること、また、それを守る秘密結社の存在などを現しているという根本的な設定に説得力がなかったことが最大の要因ではないでしょうか。
ダ・ヴィンチの名作「最後の晩餐」にワインが描かれていないから聖杯は杯ではない、ヨハネと伝えられている人物をキリストの右に持ってくると寄り添っているようにぴたりとはまる、さらに、その人物は女性でしかもキリストの妻(マグダラのマリア)で子どもを生んだ……。まことしやかに囁かれるうわさ話をさもそれが真実のように強制されても、はいそうですかと納得できるわけもなく、その大前提が崩れてしまうことで話自体が成立していないように感じました。原作はもっと説得力があるんですがね。
しかし今作では、科学と宗教の対立という歴史的事実を踏まえた上で、地動説を否定されたガリレオを中心とする迫害された科学者たちが作ったイルミナティという秘密結社が、教皇の死去に伴うヴァチカンの空白の時間にその復讐を謀るという、非常にわかりやすく、かつ説得力のある設定で進められるため、前作のような破綻がありませんでした。
またそのイルミナティの行動として、次期教皇候補4人を誘拐し、1時間ごとに1人ずつ殺害、さらに最後の1人の殺害1時間後には強力な爆弾がヴァチカンで爆発するというタイムリミットが設定されていることが非常にいい緊迫感として画面から伝わってきます。ロン・ハワード監督が「アクション、サスペンス、バイオレンスすべて前作より上回っている」とインタビューで答えていますが、これは嘘偽りなしです。
ラングドン教授による謎解き物というよりは冒険活劇というイメージのほうが合うかも知れません。上映時間は2時間を超えますが、かなりスピーディに話が進むこと、見せ場が連続することでとてもテンポがよく、あっという間に終わってしまったという印象ですね。同じくハワード監督が「ラングドン教授が学者からヒーローになるように描いた」と話していますが、まさにハリウッド的なヒーロー物とも言えます。まあインディ・ジョーンズのように殴り合ったりということはありませんが。
この映画はヴァチカンとローマが舞台となっていますが、全編にわたって中世の雰囲気が残る街並みの映像もすばらしかったです。ローマは一度行ってみたい街ですが、この映画を観て、ますます行きたくなってしまいました。
『天使と悪魔』は5月15日から全世界同時公開されます。
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