Vol.34 『旭山動物園物語 ~ペンギンが空をとぶ~』
マスコミ試写にて『旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ』観賞。いまや上野動物園を上回り、日本一の入場者数を誇る動物園として知らない人は少ないであろう旭山動物園物語のサクセス・ストーリーを描いた映画。これまでもテレビドラマやドキュメンタリーで取り上げられていますね。
今回の映画は旭山動物園の歩みをずっと見てきた小菅園長の原案を映画化しています。そのため、これまでの映像作品が、ペンギン館やあざらし館、あるいはペンギンの散歩などの行動展示がどのように生まれたかに重点が置かれているのに対し、この作品では、入場者数減少やエキノコックス症による途中閉園などの動物園が廃園になるかも知れないという危機的状況を、どのように乗り切ってきたかが描かれています。
そこには、いわゆる“泣かせます”的なストーリーも演出も存在しませんが、主人公となっている滝沢園長のひたむきな努力、そしてそれが実を結んだときの充実感が画面いっぱいに満ちあふれていて、観る者を感動にいざないます。
こんなことをしてなんになるのか? はたしてやっていることに意味はあるのか? そういう疑問を持ちながらも行動を起こす飼育員たち。それはやがて周囲に賛同者を作り、成功へとつながり、日本一の動物園へと発展していくわけですが、上野動物園を抜いたという知らせが入るあたりでは映画を観ている観客も飼育員たちと一緒になってうれしくなってしまう、そんなハートフルな映画です。
旭山動物園といえばもちろん動物と人間のドラマもありますし、雪を投げる象や妻を気遣うチンパンジーなど、撮るのに苦労しただろうなぁという素晴らしい映像も登場します。が、主役はあくまで人間。その人間たちの動物たちへの愛情、想いなどがいっぱいにつまっていました。
この映画では時間の流れをそれほど感じないのですが、描かれた実際の事件やエピソードは20年以上の時間がかかっています。それが2時間弱にぎゅっと凝縮されているので、とても中身が濃いストーリーになっています。それだけの長い時間。実際はもっと苦労の連続だったと思いますが、その苦労が実を結んだときの喜び、これを素直に感じさせてくれる、いい作品でした。
そういえば、旭山動物園の坂東副園長がちらっと登場するのですが、くすっと笑ってしまう役を演じて(?)ました。観に行かれる方は探してみてください。
『旭山動物園物語 ~ペンギンが空をとぶ~』は、2009年2月7日(土)より角川シネマ新宿他にて全国ロードショーです。
コラム, ヒューマンドラマ
2009/01/27 04:38 MOVIEW